スミマセン、考え中です

 話をしている途中に何を話しているかわからなくなってしまう、そんな経験は誰しもがある、とわたしは初めはそう思っていました。グループディスカッションで意見を求められて話しているときやプレゼンテーションでクライアントの前で話しているときなど、たった今自分が何を話していてこれから何を話そうと考えていたのかがある瞬間にまったくわからなくなって次の句がつなげられずにえ~っとか、そういったことが~など意味不明なつなぎで濁していました。緊張で頭が真っ白になるという感じのことではなく、突然自分を見失う感じでしょうか。そのときは本当に真っ青になります。その場の全員が耳を傾けて視線はわたしに向けられているのに、何を話していたかまったくわからなくなるのですからたまりません。クライアントに「ぼく今何話してましたっけ?」なんて聞けるわけがありませんし、隣に座っている同僚も目が?になっています。今思い出しても恐ろしい体験です。学生のころからディスカッションになると終始こんな感じですので周りからはスルーされることもしばしばでした。軽んじられ、当然意見を求めらることもなくなっていきます。

 ある時は幸いにも上司が一緒にいたので、言葉に詰まった私を見て場の空気が?になる前に「つまりこういうことなんです」と選手交代しくれたためことなきを得ました。上司はわたしが緊張しすぎてうまく説明ができなかったんだなと思って助けてくれたようでした。よくありそうな話ですが、こういうシーンはこれまで何度もありました。パニックになったり忘れてしまったわけではありません。
 何が起こっているのか自分でもまったくわからないのですが、話をしている最中に何かに目が向いてしまったり何かが気になってしまったりすると、時と場所を関係なく意識が一瞬でその対象に向かってしまいます。頭が強制的に切り替わる感じです。これは何をしていても起こりますから日常的に意識がどんどんジャンピングしていきます。意識が戻ってくると同時に周囲の視線も戻ってきますからとても焦るわけです。家や友人とのことなら何とかなりますが、仕事に悪影響を起こしかねませんので、なんとかしなくてはという気持ちで自分のための議事次第作りを始めるようになりました。

 自分独りでモニタに向かっている分にはまったく問題ありませんが、会議や先ほどのようなプレゼン、打ち合わせなどでは人に迷惑をかけますし、下手をしたら信用を落としてしまうこともありうるので特に注意はしていました。
 それからは事前にシナリオのようなカンニングペーパーをつくり、それに従って話を進めるようにしました。具体的に話す内容を思い出せるトリガーとしての単語やセンテンスを進行の順番にずらりと並べておきます。そして話しながらそれにさっと線やチェックをしながら進行し現在位置を見失わないようにしています。
 しかしポイントになる項目は把握できていても、口に出して話していることまではフォローしきれません。例えば青という色の心理作用について説明している時に、「青について話している」という事実は把握していても、直前までの話した内容が頭から消えてしまっていますから、もう取り戻すすべはありません。その時は仕方がないのでその場で聞くしかありません。「スミマセン、話しを見失ってしまいました。何を話していましたでしょうか」といった具合です。ちょっとまぬけな感じかもしれませんが、少なからず誰にでもあることだとわかっていますから大抵の場合はその場で誰かが教えてくれました。しかしこれが頻繁にあるとやはり怪訝な顔をされますし、次第に軽んじられてもきます。しかしそれはもうしょうがないと割り切っています。これまでこのようなことで不利益を被ったことはほとんどありませんから(そう思ってるだけかもしれませんが)開き直っている感じです。

 やはり誰しもがスマートにコミュニケーションし、円滑にミーティングを進めたいと思うでしょうが、それを取り繕うために場を濁して時間をかせいで必死に思い出そうとしても相手には伝わりますし、それで逆に印象を悪くしてしまう恐れだってあります。それならば正直に聞いてしまった方がいいかなというのがわたしの考えです。デザイナーって人は変わってるなぁと思って頂ける程度ならばそれでよしです。