初校が一番スリリング

 グラフィックデザインという業務はクライアント様の目的があって始めて発生します。
 売り上げを上げたい、顧客を増やしたい、より多く人に認知してもらいたいなど何らかの目的があって、そこへ向かうツールとして紙媒体やウェブなどメディアの方法を使うわけです。そのため私たちの業務はクライアント様にお会いしてその意向を聴くことから始まります。

 この初めてお会いするキックオフミーティングから、意向を汲んで初校(第一回目のレイアウト案)までの作業が私にはとてもエキサイティングで集中して取り組める大切な時間です。何がそう感じさせるのかというとグラフィックデザインの業務のフローの中で唯一、思考サーフィンができる工程だからです。できるというよりしなくてはいけないし、この工程の如何によっては仕上がりの根底から間違ってしまうとも言えるほど大切です。

 この時は頭の回転数を上げて様々な連想ゲームや人に乗り移ってみるイメージングなどあらゆる想像力を動員します。ADHDの私にとっては仕事でなくても日常的にそういう状態ですから、まったく違和感なく入り込める訳です。いつものように暴走を止めようとしたり、ハッと我に返って自己嫌悪になることなく思考を解放していいのですからストレスはほとんどありません。もともと考えるという行為が好きなので問題はありませんが、あらぬ方向へ思考サーフィンが行ってしまうことは常態化してますのでそのコントロールはやはり難しい。最近はノートにその思考の移ろいを文字と矢印で書き留めるようにしています。思考中は目をつぶっていますから黙々と連想ゲームが続きます。そしていったん途切れるタイミングでササッと書きます。思考した内容はすぐなら覚えてますから、脱線する寸前あたりまでを書いてまた思考に戻ります。この工程はとても開放感があり、ADHDの人にとっては頭のフリータイムのようでとても心地よい思考ができます。

 デザイナーの力が試されるのはこの初校までの思考プロセスとビジュアルの決定までだと思います。この段階まではクリエイティブな思考と社会通念の両方を使って独りでグラフィックを作ります。とても刺激的でワクワクしてきます。良いものを作りたいというのは当然ですが、それを以上に思考を発展させて組み上げることがとても楽しい。腕試しのような気持ちで毎回取り組んでいます。